犬の爪を切るタイミングは?自宅での爪切り方法と注意点

こんにちは、獣医師の百合雅です。だんだんと寒い季節がやってきました。寒いと筋肉が凝り固まり、関節に痛みが出たりします。季節の変わり目は、動物も人と同様に体調を崩しやすいため注意が必要です。

さて、今回のブログのテーマは爪切りについてですが、動物は人間とは違って自分で爪切りができません。野生動物は、運動量が多いため、走ったり歩いたり、木を引っかいたりすることで自然に削れます。

動物園にいる動物は、自然界と比べると運動量も少なくなるため、爪切りなどの処置は飼育員により定期的にされています。一般家庭で育てられている犬は野生動物と比べると、歩く距離が極端に短いため、爪が伸びやすくなります。

そのため、自宅での爪のケアが大切になってきますが、飼い主さんの中には爪切りが苦手な方もおられると思います。そこで、自宅での爪切りのタイミングや方法、注意点などについてお話しします。

爪切りをしなければいけない理由

爪が伸びることで肉球と地面に接しづらくなってスムーズな歩行ができなくなり、転倒する可能性もあります。また、爪が伸びすぎて、爪折れを起こし出血することもあります。

爪切りをしていない飼い主さんからよく聞くこと

  • 散歩をしているから、爪切りが必要ない
  • 爪切りしていて、出血してから怖くなった
  • どこまで切ればいいか、わからない
  • 足を触ると怒るから爪切りができない
  • 爪切りの道具を購入したが、あまり使っていない
  • そもそも、爪切りの仕方がわからない
  • 外で飼っているから、爪切りしなくてもいい

など、沢山の意見があります。また、犬と猫では、生え方も爪の手入れの仕方も違います。

犬の爪は前肢後肢で何本あるの?

基本は前肢に5本、後肢に4本です。(※例外の犬種もいます。)

爪切りの頻度

月1回が目安です。ただ、生活スタイルによって変わってきます。

  1. 散歩に毎日行き、アスファルトの上で爪が削れるくらい活発な犬
    → 2ヶ月に1回程度。
  2. 家の中で生活していて、たまに散歩に行く犬
    → 月に1回。
  3. 全く散歩に行かない犬
    → 月1回以上。

あくまで目安なので、爪の伸び具合で判断しましょう。

前肢の第一指の爪(狼爪)

前肢の第一指の爪(狼爪)は、地面につかないため、削れません。

豆柴にも前肢の第一指がありますので、定期的に爪切りをする必要があります。

トイプードルやヨーキーなど、産まれてすぐに第一指の断指を行う犬種もいます。第一指があるかどうかは確認しましょう。

爪切りのタイミング

基本的に、地面に爪が当たり、カチカチと音が鳴っていると、爪切りをする時期です。また、飼い主さんを前肢で引っ掻いてくる際に、爪が当たって痛いと感じた時も、爪切りした方がいいです。

爪切りの道具

ギロチンタイプやハサミタイプなどがあります。個人的には、ギロチンタイプの方が切りやすいため、こちらをお勧めします。また、ヤスリも用意しておきましょう。出血した時用に、止血剤(当院ではクイックストップ)も用意しておいた方がいいです。

ヤスリ、ギロチンタイプ、ハサミタイプ
(左から)ヤスリ、ギロチンタイプ、ハサミタイプ
粉末止血剤
止血剤

爪の切り方

爪切りに慣れている方は一人でも大丈夫ですが、しっかり犬を保定して、二人以上で爪切りをすることをお勧めします。犬を横に倒して、一人が前後肢を持ち保定し、もう一人が爪切りをします。ここであまり足を強く握りすぎると、犬も嫌がって暴れます。肘と踵の関節を固定して、犬の胴体を保定者のお腹につけることで、しっかりとした保定ができます。

爪切り時の犬の保定方法

横に倒すことで犬が恐怖を感じるようなら、立位や抱っこであやしながら爪切りをしてあげることも考えましょう。ただ、どうしても動いてしまうため時間がかかってしまいます。幼少期から爪切りの練習はしておきましょう。おやつをあげるなど、犬の気をそらしながら爪切りすることも効果的です。

どうしても嫌がってしまう犬に対しては、一気に爪切りをするのではなく、休憩を挟みながら行ってください。今日前肢ができたら、明日後肢というスケジュールでもかまいません。犬にストレスを与えないように爪切りをしてあげることが一番大事です。

爪の根元には、血管や神経が存在します。爪が伸びすぎると、この血管や神経も一緒に伸びてきます。爪の手入れを定期的にしていないと、以前はもっと深くまで切れていたはずなのに、あまり切れないという事態になります。

爪の色は犬種によっても異なります。一本だけ白い爪で、あとは全部黒い爪と混在している場合もあります。

白い爪

比較的、血管が見えやすいため、切りやすいです。

黒や茶色の爪

血管がほとんど見えにくいため、切りすぎて出血する可能性があります。

爪を切る際は1回で切るのではなく、まず血管の手前まで爪を切り、その後角を取るようにトリミングしていきます。まだ角が立つ場合は、爪ヤスリで削ってあげてください。爪が丸くなればなるほど、飼い主さんの肌に当たっても痛くなくて快適です。

爪切りのカット場所と順番
1、2、3の順番でカットします。

また、爪切りが終わった後に足裏も確認してください。肉球間には毛があります。肉球は滑り止めの役割を果たすため、毛があると滑ってしまいます。その毛を綺麗にバリカンで剃ってあげれば滑りを予防できます。

※足裏の皮膚はとても薄く切れやすいため、バリカンで傷つけないように注意してください。

出血した場合の対処法

先ほど道具の所で述べたように、止血剤で止血します。止血剤が用意できなかった場合、コットンやティッシュなどで出血した爪に当てて、数分押さえます。だいたいはこれで止血できます。

また、家庭にある小麦粉でも止血剤の代用ができます。小麦粉をコップに入れて、その中に出血した爪の足を入れます。数分で出血部位が小麦粉により固まるため、止血できます。ただ、これは止血剤がなかった時の応急処置として試してみてください。もしも、出血が止まらないのであれば、動物病院に行ってください。

もちろん、出血すれば犬も痛がります。できれば出血させないように爪切りしてあげるよう心がけてください。痛い思いをすると、次に爪切りをしようとすると思い出して、爪切りが嫌いな犬になってしまいます。

切りすぎないようにするポイント

爪を切っていくと、爪断面の中央に透明~白色に変わるプニプニとした柔らかい部分が出てきます。これが出てきたら、もうこれ以上切れば出血する合図だと思ってください。その後は、角をトリミングして終了となります。

まとめ

飼い主さんが犬の爪が伸びていることに気づかない限り、爪切りを行うことはできません。かわいい服やおいしいフード、おもちゃを購入するのと同じように、爪切りの道具も購入してみて、今回紹介したやり方で爪切りをしてみてください。

もちろん、どうしても家でできない場合は、動物病院やトリミング施設で定期的に爪切りに連れて行きましょう。
動物病院は治療する以外にも、爪切りや耳掃除、肛門腺絞りなどの定期ケアだけでも通院される飼い主さんも多いです。まずプロの仕方を実際見てから、爪切りに挑戦してみるのも一つです。

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