こんにちは。筋トレダイエット中の獣医師の百合雅です。
豆柴で肛門腺を絞れる飼い主さんはどのくらいいるでしょうか。しっぽを持っただけで怒る子や、肛門腺を触ると逃げていってしまう子も多いと思います。おそらく、犬猫にとっては1番嫌な行為かもしれません。
今回は、皆さんがやろうとしない肛門腺絞りについてお話しします。
肛門腺とは?
犬や猫の肛門の左右にある袋を肛門腺(嚢)と言います。時計で例えると、肛門を中心に4時と8時のところにあります。
肛門腺の中には分泌液が入っていて、とても強烈な臭いを発します。基本は、便をする際に便と一緒に分泌液が排出されます。スカンクのあの臭いのも、肛門腺から出る分泌液です。
分泌液の色や形状も様々です。
茶色、黒色、灰色、黄色、白色など
ドロドロ状、固形状、ペースト状、液体状など
肛門腺はどんな役割を果たす?
肛門腺の中の分泌液を擦りつけて、縄張りを主張したり、マーキングをします。
犬猫達が、肛門の臭いを嗅ぎ合ってるところを見たことがあるでしょう。これは、個体識別するためです。
肛門腺は絞らないといけない?
肛門腺が溜まっていなければ、絞る必要はありません。
しかし、お尻を地面に擦りつけていたり、肛門腺を舐め回している場合は、溜まってる証拠になります。
溜まったまま放置すると、肛門腺炎や肛門腺破裂を起こしてしまいます。そういう子は、家でシャンプーするときに溜まり具合を確認する程度で、1ヶ月に1回ぐらいのペースで絞ってあげるのがベストでしょう。
肛門腺絞りを意識しすぎて、犬が警戒心をむき出しになったり、ストレスを感じすぎないように注意しましょう。
肛門腺のトラブルについて
肛門腺炎
肛門腺のトラブルで一番多い疾患です。
肛門腺が溜まりすぎて、細菌感染を起こすと発症します。
初期症状としては、肛門腺が溜まっているときと同じで、お尻を地面に擦りつけたり、肛門腺付近を舐め回したりします。
最悪の場合、肛門横の皮膚が破けて肛門腺破裂を起こし、血膿が排出されます。
そうなる前に、肛門腺が溜まってしまう子は、肛門腺絞りを定期的に行いましょう。
肛門嚢(アポクリン)腺癌
肛門腺の中にできてしまう、悪性度の高い癌です。肛門腺を絞っていて、少しでも固い物が触れたり、いつもと違う物があるときは、動物病院へ診察に行きましょう。
肛門腺絞りのやり方
診察をしていて「肛門腺絞りだけはできない」「絞っても出てこない」と飼い主さんに言われることが多いです。
肛門腺は、強く絞りすぎないようにしましょう。肛門は人間と同じように、繊細な構造をしています。無理矢理力ずくで絞りだそうとしてしまうと、逆に傷つけてしまう恐れがあります。
肛門腺絞りに力はいりません。コツが分かれば、簡単に絞り出せます。
最初は2人以上で行ってください。前足を持っておく人と、肛門腺絞りする人です。前足を持っていて噛まれそうな場合は、エリザベスカラーを装着してください。
奥の肛門腺をしっかり保持できていないと、分泌物は出きりません。肛門腺絞りは、一発で絞り出すぐらいの気持ちで行ってください。
肛門腺の分泌液が手に付着してしまっても、石けんで洗い流せば問題ありません。衣類に付着してしまったら、水で少し洗い流して洗濯しましょう。
豆柴でも、肥満の子や肛門腺が奥に位置してしまう子は、手で絞っても出てこない場合があります。この際はグローブを装着して、人差し指を肛門の中に入れ、肛門腺を直接触りながら絞ります。
最後に
肛門腺絞りは、犬と適度な距離感を保ちつつ、慣れてしまえば簡単に行えます。
「うちの子は怒るから○○ができない」という飼い主のフレーズをよく耳にします。
肛門腺絞りに限らず、耳掃除や爪切り、歯磨きなど苦手なケアはあると思います。しかし、大切な家族である豆柴の健康を守るためと思って、是非怖がらずに向き合ってみましょう。
不安なことがあれば、私たち獣医師もサポートいたします。かかりつけの動物病院やペットサロンに相談してみてください。その子にあった方法を一緒に考え、提供できればと思います。