犬の去勢・避妊は必要?メリット・デメリットは?

こんにちは。待ち遠しい夏に向けて足のトレーニングにハマっている獣医師の百合雅です。
今回は去勢、避妊手術についてのお話をしたいと思います。

皆さんが豆柴ちゃんを飼い始めた幼少期は、成長を楽しみながらの日々だったでしょう。
しかし、成長と共に避妊、去勢手術を検討する時期は来てしまいます。家族である大事なペットが手術となると、不安でいっぱいですよね。

今回のブログでお伝えする去勢・避妊手術のメリット・デメリットを参考に、去勢・避妊ついて考えるきっかけになればいいなと思います。

去勢・避妊手術は必要なの?

最新の獣医療では、未去勢・未避妊の動物より、去勢避妊された動物の方が長生きする、というデータがあります。

これは当院でも同じ結果ですが、去勢避妊をしたからといって、病気にならないわけではありません。しかし、病気を防げるという観点からは、去勢避妊をすることで“病気になりにくい体作り”をすることが、豆柴ちゃん達にとっても必要となります。

私が日々診察をする中でも、未避妊・未去勢だった飼い主さんから『早い内に手術を受けとけばよかった』との言葉をよく耳にします。

手術時期は、去勢手術で7ヶ月齢、避妊手術で6ヶ月齢に行えます。
ここでただ、女の子の場合は発情(ヒート)が来てしまうと、血管が発達するため、手術中に出血してしまうリスクが伴うので、発情終了から約1ヶ月後に避妊手術が可能となります。

犬の発情(ヒート)とは?

大人になったメスが妊娠可能な状態の時期であり、外陰部が腫れたり、発情出血があります。生後6~10ヶ月齢で初回発情が見られ、1~2週間起こり、年約2回来ます。

メリット

女の子の場合

病気の予防ができる

メスの病気としては、『乳腺腫瘍』『子宮蓄膿症』『子宮・卵巣疾患』などです。

乳腺腫瘍になる確率は、初回発情前に手術すると0.5%、1回発情後で8%、2回発情後で25%と上がっていきます。
2歳以上での予防率は0%になるため、避妊手術を早期に行えば、乳腺腫瘍の発生リスクは抑えられることは確かです。乳腺腫瘍になってしまうと、悪性率が犬で50%、猫で90%となってしまいます。

次に、何らかの影響で子宮に菌が入り込んでしまう病気が、子宮蓄膿症です。子宮内に膿が蓄積し、最悪の場合お腹の中で子宮が破裂してしまいます。生死を彷徨う重篤な病気です。

他にも、子宮癌、卵巣癌、卵巣嚢腫などがあげられます。

望まない妊娠を防げる

子宮卵巣を取ってしまえば、生殖機能はなくなりますし、近親交配の可能性もなくなります。飼い主さんがいくら注意していても、100%妊娠を防ぐことはできません

人間も同じですが、出産は命がけですし、妊娠をさせるとなると、飼い主さんもペットも相当の覚悟が必要となります。家族でじっくりと話し合って決めましょう。
もし妊娠を考えていないのであれば、避妊手術をお勧めします。

発情トラブルや偽妊娠がなくなり、ストレスを軽減できる

発情中は、元気喪失、食欲低下、落ち着きがなくなる、下痢や嘔吐、発熱などトラブルが多いです。また、偽妊娠してしまうことで、怒りっぽくなり、ストレスを貯めてしまう子も多いです。

毎回発情後に体調を崩してしまうわんちゃんは、避妊手術することでトラブルを回避できます。

男の子の場合

病気の予防ができる

オスの病気としては、『精巣腫瘍』『前立腺肥大、腫瘍』『肛門周囲腺腫』『会陰ヘルニア』などです。メスと同様に、腫瘍や病気を防げます。

マーキングやマウンティングの軽減

オスは、男性ホルモンと呼ばれるテストステロンの分泌がなくなると、マーキングやマウンティングを減らすことが可能です。ただ去勢手術をしても、癖になってしまっていれば、改善が見られない場合があります。

攻撃行動やストレスの軽減

テストステロンの分泌がなくなってしまえば、攻撃行動も徐々に無くなってくることもあるでしょう。また、発情期のメスの臭いを嗅いで興奮しなくなり、交尾できないことによるストレスをなくせます

デメリット

全身麻酔が必要

去勢・避妊手術ともに、全身麻酔をかけて行います。100%安心できる麻酔薬はありません

そのため、麻酔をかける前には、血液検査や画像診断などの術前検査をして、問題がないかの確認をお勧めします。

しかし、術前検査が問題なくても、稀に麻酔が安定しない子も中にはいます。
豆柴はあまり関係ないですが、特に短頭種は術後に呼吸困難を起こす可能性はあります
獣医師とよく相談してみましょう。

術後肥満の可能性がある

術後、ホルモンバランスが崩れ、エネルギー消費量が30%ほど減ってしまいます。そしてストレスの軽減により、食事量も増えます。

ここで大事になってくるのが、フードの選び方です。『なかなか餌を食べてくれない』シリーズでも書きましたが、フードの表に「去勢避妊用」と書いていたらどれでもいいというわけではなく、高タンパクで低脂質のフードを選びましょう。
また、人間の食事を与えないようにも心がけましょう

毛質や毛色が変わることもある

これもホルモンバランスの崩れにより、起こる可能性があります。ただ、病気ではないため、心配する必要はありません。

繁殖できなくなる

生殖器がなくなりますので、一切繁殖させることは不可能になります。今後産ませたいという飼い主さんは、決断が必要です。

まとめ 

手術にはメリットもデメリットもあります。
わんちゃんの今後のより良い暮らしのために手術を行うのも正解ですし、デメリットで何か引っかかるという飼い主さんは、かかりつけの獣医師とよく相談した上で決断してもらうのが、1番だと思います。

まめしば亭としては、これまで長く柴犬のブリーダーをしてきた中で、柴犬が去勢をせずに、病気になってしまうケースが少ないです。柴犬の身体の負担や固体の尊厳、性格の変化を防ぐためにも、柴犬の去勢を反対しております。

この記事を書いた人

百合 雅

(ゆり まさし)

<経歴>
麻布大学獣医学部獣医学科卒業
保田動物病院(横浜)高度救命救急センター勤務
百合動物病院勤務・院長